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差分方程式その4

対数関数の差分化とガンマ関数の関係


前回、一応対数関数の差分化でそれなりに良い性質を持つものを構成できましたが
離散的な点でしか定義されない、という点で不満がありました。
(これは個人的な好みで、そもそも離散的な点でしか考えないのだからそれで十分、という考え方ももちろん出来ます)
そこで再び差分関係式Δ+xf(x)=1/xに戻ります。これは
差分作用素の定義に立ち戻ればf(x+d)-f(x)=d/xと書く事が出来ます。
直感を働かせるためd=1とするとf(x+1)=1/x+f(x)となります。
こうするとガンマ関数の関係式Γ(x+1)=xΓ(x)が使えそうです。
ガンマ関数の関係式について両辺の対数をとって微分してみると
Γ'(x+1)/Γ(x+1)=1/x+Γ'(x)/Γ(x)となるので
Γ'(x)/Γ(x)=ψ(x)とすればψ(x+1)=1/x+ψ(x)となり、目的の物とわかります。
これよりψ(x/d+1)=d/x+ψ(x/d)となるので、
ψ(x/d)もまた対数関数の差分化のひとつであるという事がわかります。
そしてこの関数は(極を除けば)任意の数に対して定義されています。
(このψ(x)はジガンマ関数とかポリガンマ関数とか呼ばれる物です)


ではd→0での様子はどうでしょうか?
それを調べるためにψ(x)が具体的にどのようなものなのかを調べてみます。
まずガンマ関数の表示式として、ワイエルシュトラスの表示式
\large\Gamma(s)=e^{-\gamma s}s^{-1}\Bigprod_{k=1}^\infty (1+\frac{s}{k})^{-1}e^{\frac{s}{k}}
を用います。これは以前導いたガウスの表示式から導けますが、詳細は略。
この表示から、
\large\psi(s)=-\gamma-\frac{1}{s}+\Bigsum_{k=1}^\infty \quad\{\frac{1}{k}-\frac{1}{k+s}\}
となり、これからs=x/dとし、x=ndとおけば
ψ(x/d)は前に定義したl(x)を用いてψ(x/d)=l(x)-γと書ける事がわかり
これからx=ndのときL(x)=ψ(x/d)+log(d)と書ける事がわかります。
右辺は任意のxについて定義できるので、離散的なL(x)の拡張とみなせます。
右辺のd→0での極限は存在すればlog(x)である事がL(x)での議論からわかります。
ψ(x/d)+log(d)-log(x)の値は積分で書け、そこからd→0での議論が可能ですが
かなり複雑かつ長い物となり、本題から外れるので略。
定義域を拡張してもやはり極限でlog(x)になる事が示せ
ψ(x/d)+log(d)は性質の良い差分化であるといえます。


こうして対数関数の差分化にもガンマ関数がかかわってくるのでした。
ガンマ関数は差分の世界と微分の世界の橋渡しをしてくれる物なのかもしれません。
ここから逆に微分作用素の性質からガンマ関数の性質を探すことも出来るかもしれません。
またなにか面白い事が見つかれば記事にしたいと思います。