TKSS等の日記

日常時々数学競馬ラノベetc

ハッセ-ダヴェンポートの関係式 その4

今回で終了。


無限級数
1+\bigsum_{k=1}^{\infty}(\bigsum_{f{\in}S_{k}}\lambda(f)\quad)t^k
について、1次の項の係数は以前の議論によりg(χ)である事がわかっているので
それ以上の項の係数、即ちk≧2のとき
\bigsum_{f{\in}S_{k}}\lambda(f)
がどうなるかと言う事が問題になる。が、以前のような
既約多項式のみを扱うかたちではなく、その次数のすべての多項式を扱うので
これは非常に簡単。例えばk=2のとき、2次モニック多項式は一般に
f(x)=x2-a1x+a2 a1,a2∈Fq
とかける。このときa1,a2は互いに束縛せず自由に動く。よって
\bigsum_{f{\in}S_{2}}\lambda(f)=\bigsum_{a_1{\in}F_q}\bigsum_{a_2{\in}F_q}\chi(a_2)\psi(a_1)
と書き直せる。これは和の順序を入れ替えて整理すれば
\bigsum_{a_2{\in}F_q}\chi(a_2)\bigsum_{a_1{\in}F_q}\psi(a_1)
となる。ここで仮定よりψは非自明であったので、有限群の指標の一般論より
\bigsum_{a_1{\in}F_q}\psi(a_1)=0であるので、結局2次の項の係数は0であることがわかる。
k>2であっても議論は基本的に変わらない。k次の多項式について
k-1次の項と定数項の組み合わせのパターンは2次の場合と変わらない。
k-1次の項と定数項の組み合わせを一つ決めた時、それを満たす多項式
それ以外の次数の項のパターンだけあるからqk-2個あることになるが
これらのfについては、k-1次の項と定数項の組み合わせが同じなのだから
λ(f)は全て等しいことになる。よってk>2の場合は
\bigsum_{f{\in}S_{k}}\lambda(f)=q^{k-2}\bigsum_{a_1{\in}F_q}\bigsum_{a_2{\in}F_q}\chi(a_2)\psi(a_1)
となることがわかるが、これはやはり0である。結局、最初の無限級数について
1+\bigsum_{k=1}^{\infty}(\bigsum_{f{\in}S_{k}}\lambda(f)\quad)t^k=1+g(\chi)t
となり、無限級数と思っていたものが実は多項式であったことがわかる。


元々は無限積を展開したものであったので、そこまで戻ってみると
\bigprod_{f{\in}S^{*}}(1-\lambda(f)t^{deg(f)})^{-1}=1+g(\chi)t
であり、もともとのg(χr)の母関数まで戻れば
\bigsum_{k=1}^{\infty}g(\chi_k)t^{k-1}=\frac{d}{dt}log(1+g(\chi)t)
となり、微分を実行すれば
\bigsum_{k=1}^{\infty}g(\chi_k)t^{k-1}=\frac{g(\chi)}{1+g(\chi)t}
という母関数の閉じた表示を得たことになる。右辺は無限等比級数の和の形であるから
展開してやれば
\bigsum_{k=1}^{\infty}g(\chi_k)t^{k-1}=\bigsum_{k=1}^{\infty}(-1)^{k-1}g(\chi)^{k}t^{k-1}
となるので各項の係数を比較することで
g(\chi_k)=(-1)^{k-1}g(\chi)^{k}
と分かる。これがいわゆるHasse-Davenport relationである。


合同ゼータ関数なんかにはこの関係式が必要になってくる場合がある。
結果からみると、母関数まで使わずとも、漸化式が立てられるのではないかと思い
いくらか計算を試みたが、かなり煩雑で、その辺の煩雑な処理を
母関数の側で自動でやってくれているのだなと言う印象。
まさに「伝家の宝刀」といった感じである。


とりあえずこのネタは一旦終了。ガウス和関連だと個人的には
Fpの2次の指標(つまり平方剰余記号)のガウス和の符号決定
をやってみたいのだが、借りてこようと思った本が見つかりません。どうしたものか。