TKSS等の日記

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三角関数の初等的展開 その3

寝るかどうか迷ってる間に書いてしまう。
一連の記事で一番技巧的なのはここ。


今回重要なのは次の不等式
0<x<θ<π/2を満たすとき
0<tan(x)/tan(θ)<x/θ<1が成り立つ
両端の不等号は条件から殆ど自明なので真ん中がメイン。
以下これを示す。


f(x)=tan(x)/xと置く。これが0<x<π/2で狭義単調増加である事を示す。
f'(x)={xsec2(x)-tan(x)}/x^2となるので
極値を求めるためf'(x)=0となるxを求める。
xsec2(x)-tan(x)=0となる事が必要であるので、これを考えると
この方程式はx=sin(x)cos(x)と書き換えられる。両辺に2をかければ
2x=2sin(x)cos(x)=sin(2x) であるので求めるxは
2x=sin(2x)を満たす事になるが、0<x<π/2の条件のもとでは
2x>sin(2x)であるので、0<x<π/2でf'(x)は0にならない事がわかる。
この範囲でf'(x)が連続であり、かつf(π/4)=4/π2(π/4*2-1)>0であるので
この範囲でf'(x)>0である事がわかる。ゆえ
f(x)は狭義単調増加である。


このことから0<x<θ<π/2のとき
tan(x)/x<tan(θ)/θ となり、これを変形すれば
tan(x)/tan(θ)<x/θ が得られる。
この関係よりm=2nを十分大きく取り、x<kπとなるkについては
1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)>1-x2/(kπ)2
が成り立つ事がわかる。ここまで来れば終わったも同然で、
任意のx≧0についてhをx<hπとなるように取り、n>hとなるnを取れば
Π[k=1,n-1]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}
=Π[k=1,h]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}Π[k=h+1,n-1]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}
と考えてΠ[k=h+1,n-1]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}
を見れば先に示した不等式から
Π[k=h+1,n-1]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}
>Π[k=h+1,n-1]{1-(x/m)2/(kπ/m)2}
=Π[k=h+1,n-1]{1-x2/(kπ)2}
がわかるので、
Π[k=1,n-1]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}
≧Π[k=1,h]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}Π[k=h+1,n-1]{1-x2/(kπ)2}
とかける。
Π[k=1,n-1]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}=sin(x)/{mcosm(x/m)tan(x/m)}
だったのでn→∞とすれば左辺はsin(x)/xとなる。
また右辺のΠ[k=1,h]{1-tan2(x/m)/tan2(kπ/m)}Π[k=h+1,n-1]{1-x2/(kπ)2}
についてn→∞とすればhがnと無関係な事から、これは
Π[k=1,h]{1-x2/(kπ)2}Π[k=h+1,∞]{1-x2/(kπ)2}
=Π[k=1,∞]{1-x2/(kπ)2}
となる。これらから
任意のx≧0について
sin(x)/x≧Π[k=1,∞]{1-x2/(kπ)2}
の不等式が成り立つ事が示せたので、前の記事と合わせて
sin(x)/x=Π[k=1,∞]{1-x2/(kπ)2}
がx≧0で成り立つ事が示せた。
また、この式の両辺はともに偶関数であるので
xは任意の実数としてよいことがわかる。
以上よりsinの無限積表示が得られたことになる。


sinの無限積表示を得るのにこれ以上初等的な方法はないと思う。その意味で自信作。
実解析の範囲だと、cotの部分分数分解表示を
連続関数の性質etcから示してそれを積分するという方法があるが、
無限和と積分の交換などは結構高等な議論だと思う。
天下りに無限積表示をおいてそれがsinと一致する事を示すという手もあるんだろうが
やった事がないのでよくわからん。たぶん難しいと思う。
複素解析によって直接示す方法(リュービルの定理とかを使うやつ)はよく知らない。
ガンマ関数を使うという搦め手もある。(これはガンマ関数の記事で触れた。)
部分分数分解表示だと、cosec2の部分分数分解表示は
初等的(高校レベル)でかつ微積分を含まない極限操作だけで示す
素晴らしく巧妙な方法があったりする。
cotやcosec2についても有限アナロジーがsinのアナロジー
(対数を取って)微分すれば得られる。そこから無限での場合を示すのは
sinの場合より厄介だが方法としてはほぼ同様。


有限アナロジーに関して今思いついたが、sinhやらcosh
同じ事がたぶん出来るな。こっちはドモアブルはいらない。
というかドモアブルのアナロジーが自明に成り立つ。というか指数法則。
…当たり前か。


ガンマ関数をsinとかで書けないかなぁと現在考え中。
大雑把なアイディアはもう有るけど、まぁそんなに安直じゃないだろうなぁ。
17時ごろ追記
ガンマ関数の類似物はtanでかけそうだ。
極限でちゃんとガンマ関数になるようにするのが難しそうだが・・・。