TKSS等の日記

日常時々数学競馬ラノベetc

三角関数の初等的展開 その1

個人的な趣味のまとめ。必要な知識は高校数学で言うところの数学3を想定。
目標はsinの無限積表示を得る事。


まずド・モアブルの公式。nを自然数として
(cos(x)+isin(x))2n=cos(2nx)+isin(2nx)]
について、左辺を2項定理で展開すると
(cos(x)+isin(x))^{2n}
=Σ[k=0,2n]ik2nCkcos2n-k(x)sink(x)
=Σ[k=0,n](-1)k2nC2kcos2n-2k(x)sin2k(x)
 +iΣ[k=0,n-1](-1)k2nC2k+1cos2n-2k-1(x)sin2k+1(x)
となるので、2式の虚部を比較する事で
sin(2nx)=Σ[k=0,n-1](-1)k2nC2k+1cos2n-2k-1(x)sin2k+1(x)
という式をえます。この式が得られる事がかなり重要です。
この式の両辺をcos2n(x)tan(x)=cos2n-1(x)sin(x)で割ると
sin(2nx)/{cos2n(x)tan(x)}=Σ[k=0,n-1](-1)k2nC2k+1tan2k(x)
という式が得られます。この式の右辺はtan2(x)のn-1次多項式になっています。
この右辺を因数分解することを考えます。
(左辺)=0となるxを探すと(分子)=0となりかつ(分母)≠0となる物は
x=kπ/(2n) (k=1,…n-1)のn-1こであることがわかります。
つまり右辺の式のtan2(x)をtと置き換えたtのn-1次多項式
tan2(kπ/m) (m=2n k=1,2,…n-1)を根として持つ事がわかります。
これらの根はすべて異なる物であるので、因数定理から
Σ[k=0,n-1](-1)k2nC2k+1tan2k(x)
=CΠ[k=1,n-1]{tan2(kπ/m)-tan2(x)}
という因数分解が得られる。(Cは定数) これをさらに変形して
Σ[k=0,n-1](-1)k2nC2k(x)
=C'Π[k=1,n-1]{1-tan2(x)/tan2(kπ/m)}
とする。(C'もやはり定数)この表示より、定数C'はこの多項式の定数項となる事がわかる。
(右辺を展開すると分かる)
左辺の定数項は2nC1=2nであるのでC'=2n
これより
sin(2nx)/{cos2n(x)tan(x)}=2nΠ[k=1,n-1]{1-tan2(x)/tan2(kπ/m)}
が得られ、両辺2nで割って、x=θ/mを代入すれば
sin(θ)/{mcosm(θ/m)tan(θ/m)}=Π[k=1,n-1]{1-tan2(θ/m)/tan2(kπ/m)}
という式が得られる。
これはn→∞とすると左辺はsin(θ)/θに収束し、
左辺の積について形式的に各項n→∞(即ちm→∞)とすると
Π[k=1,∞]{1-x2/(kπ)2}
となる事から、sinの無限積が得られることになる。
このことから、この式はsinの無限積の一種の有限アナロジーである事がわかる。


この式と最初の多項式表示の比較によりζ(2n)が求められたりもする。
次回、上でやった「左辺の積について形式的に各項n→∞」というのを
順序を踏んで正当化する。
ここまではドモアブル、二項定理、因数定理と大道具を使って
荒削りに形を作っていく作業。
ここからは微分やら極限に持っていく操作などを丁寧にやって
細部を詰める作業という感じ。
こっちの作業がなかなか進まなくて
たまに思い出してはしばらく考えるという作業を2〜3年してましたが
ここ最近やっと正当化する手順がわかった、という次第。